アメリカ臨床研修入門


Residency/Fellowshipインタビューのためのヒント
Kenichi Tanaka, M.D.

プログラム紹介

実際に面接に行ってみると、名声ほどでもないと思えたり、
または期待以上の印象を受けたりすることがあり、施設を知名度で
判定するのは危険です.
また、インタビューを重ねるうちに自然と応答もうまくなります
ので、第一志望の施設の面接は後半にするとよいでしょう.
どの施設も、そのトレ―ニングに長所・短所があり、どこが一番
よいということは言えません.したがって、私の見た範囲で長所(pros)
と短所(cons}を並べておきます.

l. Duke Heart Center(定員4-5名)
   http://anesthesia.mc.duke.edu/

Pros-二年間の臨床+リサーチプログラム、ー年目は臨床プロジェクト
をおこなう.
心臓患者のデータベ―スの充実. エコートレ―ニングは3ヶ月(TEE+TTE).
研修には小児心臓(2months)、胸部外科麻酔(Im。nth)を含む.
肺移植症例が大変多い.
レジデンシー数はl998年度からは人気回復(l0 residents for each CAl-3
year). In-house call(自宅当直)はない.
コンピュ―タはマックが主流である.

Cons-外科の力が強い。CTICUは外科の管理下にあり、麻酔科は関与
していない.大学のあるDurhamは田舎であり、家族向けにはよいが、
独身者には退屈.
ChairmanはFMGを歓迎していない(JAN NewsIetter No.5 ASA report参照).

2. University of Pennsylvania(定員4-5名)
  http://www.med.upenn.edu/~dripps/

Pros-臨床は、ThoraeieとCardiacを両方おこなう。
ICU feIlowshipをミックスしたl8ヶ月プログラムもある(eligible for
CCM certification).
エコ―(TTE+TEE) 6 weeksであり、Dr.SavinoはSCA/ASE echocardiographer
examの試験委員をしている.
CTICUには麻酔科が関与しており、―ヶ月のロ―テ―ションがある。
外科との関係は良い. 3次元エコーの研究などが行われている.
政治的にも強いプログラムである(前ASA会長のNorig Ellison,M.D.
も心臓麻酔部門にいる). ln-house ca1lはない. 給料がよい.
ChairmanであるDr.Longneckerは、娘が現在日本に居住している
とのことで、日本人には好意的です.
NJのヤオハンや、NYC、Washington,D.C.への日帰りドライプが可能.
基礎研究室では、コンピュ―タはマックが主流である。麻酔科の
秘書、イントラネットなどはウィンドウズである.

Cons-臨床のみのフェロウシップ。ResidentSupervisionが主な仕事
で、フェロウがhands-onで症例をすることは少ない.小児心臓麻酔は、
通常含まれていない.
レジデンシ―数の減少からは回復していない(契約したレジデントに
ポ―ナスを支給している!).
Univ.Penn?Hospitalは、保険請求のミスから多額の追徴金を科され
ており、病院の安定を危ぶむ声がある.
PhiIadelphiaは都会であって、犯罪も少なくない.

3. University of Virginia(定員1名)
   http://www.med.virginia.edu/medicine/clinical/anesth/index.html

Pros-エコ―は(TTE+TEE) 6 months! Cardiology labで訓練を受ける.
症例は少ないが、移植・Heart Port surgeryも行っている.
小児心臓もよく指導される(Victor C.Baum,M.D.). 小さい麻酔科なので、
家庭的雰囲気がある. 社交ダンスを習いたい人(JAN Newsletter No.5
Shall we dance?参照)は、麻酔指導医の社交ダンスサークルに入って
レッスンを受けられる.
Chairmanは少数ならFMGを歓迎する、ということである.
非常に強い基礎研究施設を持っており、CarI Lynch III,M.D.,Ph.D.
(Anesthesiology Editor)などの著名な研究者がいる.
レジデンシ―プログラムは非常に人気が高く、常にマッチングで定員を
確保できている数少ない大学である. In-houseca1lはない.
コンピュ―タはマックが主流である.

Cons-0RのTEEは一台のみで、MultipIane、pediatric monoplaneプロープが
ーつずつしかない. 症例数が少ない. 臨床研究には不向きである.
CTICUは麻酔科管理でない.
大学のあるCharlottesvi11eは田舎であり、家族向けにはよいが、
独身者には退屈.

4.Johns?Hopkins University(定員3名)
  http://www.med.jhu.edu/anesthesiology/

Pros-エコ―は(TTE+TEE) 1month. Cardiology labで訓練を受ける.
小児心臓も含めて、ヴァライエティに富んだ症例がこなせる.
CTICUは麻酔科管理であり、1ヶ月のローテーションがある。
外科との関係は非常に良いという.
指導医は若手が多く、雰囲気は良い. 非常に強い基礎研究施設を
持っており、NIH grantも多い. Calcium Channel, Coagulationなど
の研究者がいる.
臨床のみの一年プログラムと、臨床+リサーチの二年プログラムが
ある. レジデンシ―数の減少からは回復している(各学年定員25名).
In-housecallはないが、フエロウはー週間単位でon calIをカパーする.

Cons-0RのTEEは一台のみで、MuItiplane、monoplaneプロ―ブが一つ
ずつしかない. モニターの類も古いものが多い. 心臓麻酔部門の臨床
研究はそれほど盛んでない.
Baltimoreは都会であって、犯罪も少なくない(しかし、病院から少し
北へ行ったところにあるJohns Hopkins Universityの辺りは非常に
美しく、安全である).
コンピュ―タはウィンドウズが主流である(基礎系ではマックあり).

5. Emory University(定員10名)
   http://www.emory.edu/WHSC/MED/ANESTHESI0L0GY/

Pros-全米で第4番目に症例数の多い心臓施設である.したがって、
採用する  フェロウの数も多い(8名、l997年度)。臨床のみの一年
プログラムと、臨床+リサーチの二年プログラムがある.近くにCDC
があり、疫学のコ―スも取れます。
フェロウはHands-onで症例をこなすことが多い.
エコー(TEEonly)は6weeksであり、Dr.Shanewiseがー人のフェロウ
につきっきりで読影を教授する. 彼は、SCAechocardiographer exam
の試験委員をしている.
Emoryエコ―プログラムの概要は末尾の資料を参照して下さい.
CTICUには麻酔科が関与しており、一ヶ月のロ―テ―ションがある.
外科との関係は良い(生理学で有名なGuyton博士の長男が心臓外科
のチーフである).
凝固系の臨床研究が盛んで、研究資金供給も安定している。
現在のChiefであるDr.Hugは来年で退官となり、後任にはDr.Jerrold
Levyが決まっている. Dr.Levyは、気さくな人で、かなりの日本贔屓
であり、日本食には非常に詳しい.
他の指導医も大変感じのよい人が多く、心臓麻酔部門の4医師は、
ABA Oral board examの試験官である. ASAのリフレシャ―コースの
講師も多い. In-housecallはない.
コンピュータはマック・ウィンドウズが混じっている。
Cons-純粋な基礎研究は、臨床研究に較ベ少ない(基礎研究でNIH grant
を望む向きには、上記の施設#2,3,4が勧められる).
Atlantaは都会であって、犯罪も少なくない(病院周辺は美しく、安全で
ある). 3000人規模の日本人社会があり、ホ―ムシックにかかることは
ないが、日本人村社会の雰囲気があり、アメリカ的生活だけを求める人
には不快な可能性がある.

6. University of Pittsburgh(定員l-2名)
   http://www.anes.upmc.edu/index.html

私は、CA-3の六ヶ月を心臓麻酔で過ごしました.症例としては、
Transplants, MIDCAB, Redo-CABG, Va1vesなどが主です.
Thoracic Aneurysmはあまりおこなわれません.
フェロウは、一ヶ月のTEEと三ヶ月のCongenital Heartの麻酔を
Childrens Hospitalで行い、残りは成人心臓麻酔を行います.
一日に、大体二例の症例をHands-onで麻酔します. エコ―は、
全症例に使用可能です(HP1500 4台,HP5500 1台,many multiplane
probes!). エコ―ローテーションの際は、内科の心エコー担当の
医師について、読影をおこなう.              '
希望すれば、ICUもロ―テートできますが、麻酔科直接関与では
ありません(ICUとCardiac anesthesia両方をする指導医はいない).
臨床研究はいまのところあまり盛んでありません. 基礎研究では、
心臓麻酔ChiefのDr.Quinlanがanesthesia mechanism研究をして
います(Chairman:Dr.Firestoneのところには日本人研究者もいる).
コンピュ―タはウィンドウズが主流である.
月二回の普通当直(trauma call)をしなければなりません.
給料の他、$Z000のテキスト・学会費用補助、土曜日7ー15時に$50/hr
のMoonlightingがあり、家計の助けになります.
レジデント数は、現在低下しているが、1999年より回復の見込み.

ピッツバーグには、JAPGという日本人会もあり、パスポートの
書き換えサーピス、ピクニック・新年会などの催しがあり、
さらに日本食料品店あり、生活には困りません.
CMUなどに留学する企業の人も多く、E-mailで生活情報などを受け取れる
Mailing Serviceもあります。車での旅行は、Niagara Fallsまで5-6時間、
Philadelphiaまで5時問、Washington,D.C.まで6時間程度でしょう.
気象は非常に厳しいです. 冬に零下になるのは当然です. できれば、屋内
駐車場が欲しいところです(さもないと、毎朝車の窓の氷かきが待っています).

インタビュ―終了に続く


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