アメリカ臨床研修入門


内科研修ガイド各論
Hitoshi Tomizawa, M.D.


インターンの―日

病院にはだいだい6時半から45分位に入り、レジデントと
ラウンドする前に―人でプレラウンドする。この時に十数人
いる患者のバイ夕ルサインをチェックし、夜中に何か容態の
変化はなかったか、夜中にオーダーしておいたX線や採血の
結果を、Night Floatからサインアウトをもらう。

ラウンド

7時を過ぎた頃にレジデントがやってきて、医学部生も
含めたチーム全体でラウンドする。
ラウンドする患者は大体30ー40位である。ここでは、
要領よく検査結果を確認し、鑑別疾患にはどんなものがあり、
治療方針が決定される。時に面白い症例や臨床上重要な疾患
があると、レジデントはイン夕ーンと医学生にミニレクチャー
をする。イン夕ーンはこう所でどんどんレジデントに質問し、
疾患の定義、検査の重要性、治療の正当生を学んでゆく。
8時か9時になると、フロア・アテンデイングが来て、
アテンディングラウンドを行う。ここで新入院の患者の
プレゼンテーションが行われる。上記の症例でいえぱ、
主訴、現病歴を述べたところでアテンディングは、どのような
既往歴、生活環境、家族歴が、患者の疾患の診断に重要なのか、
こと細かく聞いてくる。そして身体所見を述べたところで、
どういう所見が診断を確定するうえで重要なのか、頚静脈の
怒張、心雑音は何を意味するのかを間いてくる。百千練磨の
アテンディングに対して、こういう場で的確に答えを出せると、
イン夕―ンとしての評価がぐっと上がる。しかし大抵は、
しどろもどろで、汗だくになりながら、レジデントに助け船
を出してもらいながら、答えることになる。検査結果を吟味
した後で、診断とその治療を検討し、実際に患者のべッド
サイドにチ一ム全体で向かう。
ここでアテンディングは、素早く、しかし的確な病歴の取り方
と診察の仕方をイン夕―ンに実際身体で教える。イン夕―ンの
間は、教科書を読む暇もほとんどないくらい忙しいので、
こういう場で、目と耳と身体全体で、アテンディングの教えて
くれるものを覚えていく。

この後、放射線科に向かい、胸部X線やCTをチェックする。
ここで再度診断と治療が正しかったか総括され、アテンディング
はチームに指示を出し、自分のもつクリニックへと去る。
そしてレジデントもモーニングレポート(アテンディング、
チーフレジデントの前でレジデントが症例報告を行うもの)に
出席する。厳しい質問が次から次と浴びせられ、レジデントは
よくつるし上げにされる。

ここでようやくインターンはチヤート(カルテ)を書き始める。
チャートの書き方は、訴訟の多いアメリカでは、
「何月何日  著変なし」
などというカルテの書き方は許されない。
S0AP方式に乗っ取り、上述したH&Pをもっとかいつまんで書いて
ゆく。大体半ページから、なにか病状に変化があった場合や処置
をした場合には、数ページにも及ぶ。
S(subjective)は患者の主観的訴え(胸痛がよくなったとか、
頭痛がするなど)を書く。
0(Objective)は客観的所見で、バイタルサインに始まり、身体所見、
臨床検査を書く。
A(Assessment)には診断名を書き連ね、P(Plan)でその日の計画
を書く。
アメリ力人の多くは独特の宇で、しかも略語、記号の羅列でなれる
までは何が書いてあるのかさっばり分からない。
アメリカ人のインターンに聞いても、彼らでさえ読めないことが
あり、まるで暗号を解くような感覚である。
上の先生になれぱなるほど字が汚くなり、指示を理解するのにひと
苦労である。読めずに放って置くと、翌日、お前は私のノートを
読んでいないのかと怒られる。字が汚くて読めないなどと上の先生
には言えないので、またつらい夜を過ごすことになる。

その他のラウンドに続く


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