アメリカ臨床研修入門 

米国麻酔科レジデント志願
-USMLEStep1&2合格まで-
Isuta Nishio, M.D. 


From Tokyo to HongKong

私は現在-国立病院に勤務する麻酔科医です。ニ年間ほど
ぺンシルバニア州ピッツバーグ大学の麻酔科に研究員と
して留学し三年ほど前に帰国しました。
帰国当初はそれほどでもなかったのですが、次第に向こう
での生活がなつかしくなり、また聞いたり読んだりする
だけでなくその臨床の場に実際に自らの身を置きたいと思
うようになりました。
また、彼の地で生まれた4歳になる息子のことも考え、
妻とも話し合い、いささか遅すぎる決断でしたが麻酔科
レジデントに応募する決心をしました。
臨床で留学するとなるとまず諸々の試験に合格しなければ
なりません。仕事の合間を見けて勉強するのには結構覚悟
がいりました。
臨床系の問題だけでも手を焼きそうなのに、基礎系の勉強
までしなければならない米国のUSMLE(ECFMGcertificate)
は荷が重く感じました。
その点カナダのEvaluating Exam(EE)は臨床問題が主体なの
で少しは楽だろうし、同じ北米なら医学教育の点でも大差
無いだろうなどと勝手に思いこみまずカナダに的を絞り
勉強することにしました。そうは言っても国試を受けてから
l0年以上経っている身としては、やはり-通り勉強し直さなけ
ればなりません。カナダもアメリカ同様、内科、外科、
小児科、産婦人科に加え、精神科もメジャーな科目とされ
ているため、USMLE Step2用のテキストを買い集め取り
掛かりました,

ちなみに私が主に使った参考書はWilliams & Wi1kinsの
NMS Seriesでした。これは図表が少なく読むのもいささか
退屈な本ですが、限られた時間ではいろいろ手を広げるわけ
にも行きませんし、各章末の簡単な練習問題は知識の確認
に少しは有効だったように思います。国試でも勉強しな
かった精神科はこれに加え「Psychiatry made ridiculously
simple」、「0klahoma Note」を愛用しました。
公衆衛生はAspen Publication社の「A Study Guide to
Epidemiolgy and Biostatistics」がお手軽で練習問題も
ついていて良かったように思います。
仕上げ用にApp1eton & Langeの Review for USMLE Step2
及び USMLE Step2 Reviewを使いました。
EEはForeign Medical Grads (FMG)がカナダで臨床研修する
のに最低限パスしなければならないもので(実際にライセンス
をとるにはさらにカナダ本国で実施されるQua1ifying Exam1&2
が必要)、本国以外では世界主要都市数カ所で行われますが、
日本では実施されておらず、香港(中国に返還された今は
どうか知りません)まで行かなくてはなりませんでした。
たまたま、その年はΛsAや家族旅行などで飛行機を利用して
いたためmi1eageが貯まっていて無料航空券が手には入った
のは幸運でした。

試験会場はカナダ人学校の校舎で、受験者は僅かに3-40人
足らずでした。3時間の試験が午前と午後にありl日で終わり
ます。問題、形式ともにUSMLE Step2によく似ていますし、
分量が少ない以外は程度も同じぐらいのように思いました。
受験者の殆どがアジア系で誰が日本人かなかなかわかりま
せんでしたが、試験終了後,日本語が耳に入ってきたので
話しかけると国立小児病院の麻酔科と心臓外科の医師でした。
外国では日本語は直ぐに耳に入ってくるもので、それから
地下鉄に乗るまでに次と日本人受験者が声をかけてきて
最終的に私を含め7人程のグルーブになり、まるで桃太郎の
行列のようでした。そこで本場の中華料理を征伐しにでかけ
ましたが、お互い異国の地での試験でこれほど日本人医師に
会えるとは思っていなかったこともあって大いに盛り上がり
ました。
カナダはポジションが少ないこともあるのでしょうが、FMG
には門戸が特に狭いようで,カナダの医師、医学生と同時には
マッチング(Canadian Resident Matching Service,CaRMS)
してもらえません。Second Iterationといっていわば残り物
(Unfi1led programs)の中から探さなければならずチャンスは
低く、また多くのProvinceで応募者に永住権とT0EFL600点
以上を要求しています。永住権など持っているはずもなく、
特に強力なコネクションがない限りFMGがいきなり応募しても
見込みは薄いと考えた方が良いのでしょう。

From HongKong to Pittsburgh
に続く


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