ドイツでの留学生活(ウルム大学 応用生理学教室)

Ken Sata, M.D.    


今回の留学が本決りになったとき、旅行ガイド、留学ガイド
その他集められるだけの資料に目を通して見ました。しかし、
ドイツについてのくわしい情報はなかなか得られませんでした。
海外の生活も始めてならば、―歳半の子供を連れて飛行機に
長時間乗るのも初めて、また、テレビなどの報道関係から得ら
れるドイツの話題には、ネオナチなどの物騒なニュースが多く
不安は募るばかりでした。
ドイツへの留学の決定、資料集めから始まり、出発の日も
おおまかに決め、数カ月もかかるといわれたビザの申請にも、
麻酔業務の暇を縫って大使館へガイドに書いてある通り2カ月前
に行きました。しかし、悲しいかなまだたくさんの人が並んで
いるのにもかかわらず午後12時で受付終了! しばし茫然、
まるで入局当時に麻酔科のポジションにはいるものの、指導医の
なすがままされるがままで看護婦、術者に自分の意見が言えずに
おどおどしていた自分を思い出し、外国渡航前の大使館での手続き
時点で先行きの不安がー層募ってしまいました。
翌日朝早く出直しようやく終了。
出発日もきまり荷物も送りだし、あとは大使館からの連絡を待つ
ばかり、しかしいつまで経っても連絡は来ず電話の問い合わせにも
返事はいまいちはっきりしない、結局正式にビザが降りたのが出発
数日前、しかもたったの3カ月闇のみ有効なもの、あとはドイツに
入ってからビザの延長をするようにとのこと。

不安を募らせながらドイツに入国、まずは外人登録そしてビザの延長
手続きなど、とにも角にもドイツは書類の国、何をするにおいても書類
が必要となって来る。更に融通も利かないときている。日本で取得した
ビザの切れる頃にまた来いというので書類を全てそろえて持って行くと、
今日は忙しいから一週間後に取りに来るようにとのこと、次週のフランス
への旅行に間に合うかどうかが頭をよぎるが、ドイツ語での交渉は困難
を極めるため内気な日本人が顔を出し、けなげに一週間を待つ。
一週間後にもらえたビザは、一年間有効なもの。その先に関してはまた
一年後来るようにとのこと。後から聞いたところによると、基本的には
一年毎の更新が必要でドイツで働いているとビザの更新も長くなりドイツ
人と結婚していると永住権を得られるという
ことでした。
ドイツでは基本的にドイツの大学を出ても外国人には医者の免許が
すぐには与えられないそうです。日独ハーフの先生でも医師免許を
貰うのに卒業後6年間かかったという話もあります。
また、医師の雇用に関しては、
ポジションにもよりますが3年なり6年毎に病院と契約をしなければ
ならず、大学病院などではまず再契約することは難しいということ
でした。

ここウルムは、ドイツ南部に位置し世界―の高さを誇る大聖堂と街
の中心を雄大に流れるドナウ川を誇りにしている田舎町です。
気候の面では夏はおよそ3カ月程それも日本のような湿度の高い暑さ
ではなく爽やかな夏です。
その他の季節はほとんどが冬で1月頃には街中が凍り付き木々も樹氷
で真っ白になってしまいます。こっちに来る前には、不安であった
治安面に関しては日本並にもしくはそれ以上に安全で今ではこの街で
安心しきって生活しております。
ドイツと言えば、ビール、ワイン、ソーセージ、べンツBMWなどの車、
更に速度無制限の高速道路などが思い起こされますが実際ではそのーつ
一っがとてもよく出来ています。簡単には言い表せないのですが、
今では自分にとってとても魅力のある街であるという気がしています。
ここでの生活は、とてものんびりしていて日本での忙しい麻酔業務が
うそのようです。
自分の研究テーマは悪性高熱で、ヨーロッバ、北アメリカ、日本の統一
されていない検査法に―定の基準なり新しい検査法ができればと思い
日々の実験に明け暮れています。日本では臨床が主だったのでこの
基礎研究だけの仕事に関しては少し物足りなさが感じられますが、少し
ずつでも臨床にかかわれればと思っていろいろな病院にも見学に訪れたり
しています。
ドイツの医療現場を見て日本の医療のおかしな点、正した方がいい点など
幾つかあるのですが、機会があれば次回にでも問題提起という形で書いて
見たいと思います。  今ではドイツでの生活にも慣れて来て、ゆったりと
した生活にどっぷり漬かっています。この人生での夏休みが終わるころ、
日本でのハードな生活に戻れるかどうか多少不安ですが、最後までドイツ
での留学生活をエンジョイしたいと思っています。
皆さん、もしドイツにっいて他に関心のあることなどがありましたら調べ
てみたいと思いますのでご連絡下さい。


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